「なんかイメージと違うんだよねー」。
クライアントからのそんな一言で、はまっていく修正の無限ループ。二転三転したけど「結局最初に提案したデザインに決まっちゃった」とか、打ち合わせ時に「デザインはデザイナーのセンスに任せる!」なんて言ってたのに、いざお任せでデザインの提案すると「なんか違う」の一言で一蹴されたり……。
結構「デザイナーあるある」だと思うのですが、みなさんはそんな経験はありませんか?
そんな校正地獄にはまってしまう理由は、間違いなく「ヒアリング不足」です。
今回はそんなヒアリング不足の問題について。過去、僕の力不足が原因で世にでることがなかったデザインたちの弔いになればと思い、「デザインの修正回数を減らすために打ち合わせにて確認しておきたいポイント」を解説していきます。
クライアントが求めているものは「デザイン」か「成果」か
例えば、「チラシを作って欲しい」と依頼があったら、そのチラシを作る目的として集客や売上のアップなどを考えますよね。
上記の例のように「デザインは問題解決の術」という認識をしているデザイナーってきっと多いと思います。僕もその一人です。
でも、成果ではなく、「自分の思い描くものを形にしてほしい」というお客さんも中にはいらっしゃいます。
例えば、商品のニーズやターゲットをガン無視した、お客さんの趣味嗜好が盛りだくさんのデザインを依頼されたり、雑誌や新聞の広告のように定期的に掲載しているが故に「広告を出す目的」を見失っている場合があります。
このように、デザインの依頼があった場合に、クライアントが求めているものが、「お客さんの想いを形にするデザイン」なのか、「デザイン物を作ることによって得られる成果」なのかをヒアリングを通して汲み取る必要があります。
社内向け?社外向け?デザインの良し悪しを定める判断軸をつくる
上記で記したように、チラシひとつデザインするにも、クライアントが求めてるモノが何かを知らないと、お客さんの満足にはつながりません。
また、ニーズやターゲットに寄り添ったデザインを作るか、自社のブランドイメージを伝えるデザインかによっても、デザインの形は大きく異なります。
そこで大切になるのがそのデザインの良し悪しを定めるための判断軸をつくること。社員のモチベーションを上げるため、会社のあり方、やり方を示すための社内向けのデザインを作りたいのか、売上や集客を目的とし、想定した顧客、エンドユーザーに寄り添った社外向けのデザインを作りたいのか。その軸を明確にしないと、デザインの良し悪しを判断できません。また、良し悪しを判断できないが故に、担当者の独断と偏見で色を変えたりフォントを変えたりの校正地獄にはまってしまったり、最終的に社内社外どちらにも伝わらない、悪いデザインに仕上がってしまいます。
必ず自分の制作実績を見てもらう
どんなに器用なデザイナーでも、デザインの分野の得意不得意はあります。例えば、男性向けのインパクトがあるデザインが得意でも、女性が好む、繊細で上品なデザインが苦手だったり、ロゴマークのデザインは得意でも、チラシなどの紙媒体のデザインが得意だったり。
自分が得意なデザインを示しておかないと、苦手な分野のデザインの依頼が来た時、お客さんの求めているモノを作れず、最悪クレームに繋がっちゃたりもします。
そうならないためにも、お客さんには必ず自分の制作実績を見てもらうようにしましょう。実績も見てもらうことで、自分の得意なデザインを知ってもらえることはもちろん、打ち合わせ時、デザインの方向性を定める材料にもなります。
特に、自分のデザインの得意不得意を知らない可能性が高い、知り合いから紹介案件や、関係の浅い知り合いからの依頼は、しっかりと実績を知ってもらった上でお仕事をしないと、依頼者もデザイナーも、はたまた紹介してくれた人も幸せになれなくなってしまう恐れがあります。
コミュニケーションを大切に
良いデザインを作る最大の近道は、お客さんとのコミュニケーションを取ることだと思っています。今の時代、クラウドソーシングや定額インハウスデザイナーサービスなどを利用すれば、安くデザイン物を作ることができます。けど、これからデザイナーとして大切になっていくのは、モノを作るだけではなく、しっかりとお客さんの言葉の奥にある「求めているもの」を見つけ出し、形にしてあげることなんじゃないかなと考えています。
デザイナー / クリエイティブディレクター
竹本 純
イラスト / 清水まきこ